ためやん推薦-旧建設省指定有害図書

「誰の許可を得て、この川を下っているのか」「この川原の石ころ一つでも動かしてはいけない。これはすべて建設省のものである」「あの看板を見ろ。あそこにちゃんと「○○川、建設省」と書いてあるだろう。この川は建設省のものなのだ」{「小ブネ漕ぎしこの川」野田知佑}より


 野田知佑の書いた本のほとんどは建設省指定の有害図書になってしまうだろう(=`▽´=) しかし、ただ生真面目に建設省批判だけをしているのではなく、いろんなことも含め、おもしろく愉快な表現で書いているので読んでいて楽しい。
皆の衆も是非、野田知佑の愉快な本を読んで、日本の自然を考えて欲しい。


 ---建設省は例のごとく「御用学者」を使って調査させ、例のごとく「河口堰は川の生態系を狂わすことにはならない」と発表したが、これは嘘だ。
 何故、建設省が堰の建設に固執するかといえば、それは1500億円という多額のお金が使えるからだ。そのことによる省の権力拡大、土建業者との癒着、業者から関係代議士へのリベート、等々、建設省周辺がうるおう。----{「ガリバーが行く」野田知佑}より

 ----「堰ができればアユ、シジミには大きな影響が考えられる」という結論を出した。ところが、建設省や水資源開発公団はこの部分を書き換えて「大して影響がない」とし、その偽の結論に立って河口堰建設の閣議決定をし、工事を始めているのである。そのことを1989年の11月にNHKが放映した。建設省側は「あたかも建設省が報告書を改ざんしたかのような番組だ」と抗議した。その抗議をうっかりした人間がきくと「あたかも建設省が改ざんしなかった」かのような印象を持つだろう。----{「小ブネ漕ぎしこの川」野田知佑}より

 ----理論的に破綻した建設省側は反対派の懐柔、スキャンダル暴露、恫喝、怪文書配布などを始めた。
 例えば新聞社や通信社の記者が河口堰について本当のことを書くと、つまりそれは建設反対になるのだが、その記者に様々な形で圧力がかかるのだ。-中略- ある一人の記者について建設省は数十ページに及ぶ身上調査書を作り、それを社の上層部にばらまき、その結果、その記者は地方の閑職に左遷させられたという事件もあった。
 ある大学で河川工学の教授が長良川河口堰について「これは川の生態系を殺すことになる」と講義をすると、建設省から「おたくのゼミの学生は就職できなくなりますよ」と脅しの抗議がきた。----{「さらば、日本の川よ」野田知佑}より

 ----後で、あれは裁判官志望の人たちだ、と教えてもらったが、この将来の裁判官達は、お上にたてつく不逞の輩であるぼくと接触すると、出世の妨げになる、と考えたのである。お上に不利になるような言動は一切しない、と決めているのであろう。
 市民運動や環境裁判で国に不利益な裁定を下した裁判官は一生うだつが上がらない、といわれる。そういう巷の噂が納得できるような出来事であった。----{「さらば、日本の川よ」野田知佑}より

 ----吉野川河口堰のダム審議委員の人たちが長良川に見学に行ったとき、現地の中部地建はシジミの全滅した従来の漁場を避け、新しく砂を入れてシジミを養殖している場所に網を入れ、「シジミは全滅していません」といい、河口堰の上にたまったヘドロを「これはヘドロではなくシルトです」と説明した。吉野川のダム審議委員達は自分の見たいものだけ見て帰った。そして、長良川河口堰ではシジミは生存しているし、ヘドロもないではないかという。
 各地のダム審議委員会は、そのほとんどが建設省側の人間で占められている。結論は最初から出ているのだ。この人たちはわれわれとは全く違った世界の人で「平気で嘘をつく人々」である。----{「川へふたたび」野田知佑}より

 作品には
「日本の川を旅する」
「のんびり行こうぜ」
「川を下って都会の中へ」
「ガリバーが行く」
「小ブネ漕ぎしこの川」
「北の川から」
「南の川まで」
「ハーモニカとカヌー」
「カヌー犬、ガク」
「川へふたたび」(エッセイベスト集)
などがあります。

 現在、野田知佑さんは、徳島県海部郡日和佐町に移り住み、「カッパのげんさん」らと 平和に暮らしているそうです。
 日和佐町から高知県側へ少し南下したところに海部町というのがあり、そこには海部川という実に綺麗な川が太平洋に流れています。総延長距離は短いですが、四万十川よりも水質は綺麗だそうです。カヌーイストを興奮させるような3級以上の瀬はありませんが、中流以降では川幅が広くゆったりと流れています。また、源流の山の名前が「鰻轟山」(うなぎとどろきやま)という興味深い名前の山です。それがしはこの山には登ったことはありませんが、峠近くから荒れまくった登山道が微かに付いていました。山名の由来は真偽のほどはわかりませんが、麓に大きな鰻が棲んでいたとか・・・。

 建設省は、昔は工業用水が必要だからという名目でダムを沢山作ってきた。ところが今は、いつのまにかその名目を「人の生命を守る」という名目に変えて沢山のダムや河口堰や護岸工事を行っている。だが、その名目も今は根拠が無くなって来つつある。大雨の時に川が決壊するから護岸工事をし、川底までもコンクリートで固めるような工事はもはや非常識なのである。川を直線化し、コンクリートで固めることは、大雨の時には 本来の土による水の保水力が全くなくなり、短時間のうちに川の水が増水する。工事以前には水害の無かった川が工事をしたことによって水害が各地で起きるし起きそうになっている。
ドイツなどでは、過去にコンクリートで固めた護岸を壊して土に戻しているというし、アメリカでも無用なダムは壊している。
 吉野川第十河口堰新規建設は何のためのものか。徳島市の建設をめぐる住民投票で圧倒的多数が反対したことについて推進派の人がテレビのインタビューに答えていた。
「これで、徳島の発展はもうない・・・」
建設目的は洪水から「人命を守る」ではなかったのか!?
建設理由の本当の目的は全く別の所にあるようだ。敵は本能寺。 「人命を守る」などというのは「大ウソ」なのである。
 しかしこの住民投票の意義は大きかったと思う。これ以降、無関心な国民の多くも公共事業に多少なりとも 関心を示し、選挙も近いとあってか無駄な大型公共事業がかなり見直された。
しかし建設省周辺のマフィアたちは利権が絡むだけにこのまま黙って引き下がってはいないだろう。 これからどのような手段で巻き返しをしてくるのだろうか。ドイツやアメリカの先進国のように、 こんどはダムや護岸コンクリートの解体に一生懸命に裏細工をして、精を出してくるかも。 そのときは必要なものまで破壊しないよう願いたいし、国民もお上の「大ウソ」に騙されて、「バカ国民」にされ笑いのもにされないよう注意していただきたい。

凸(`、´メ)